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カテゴリー: 免疫学

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The Frontiers in Life Sciencesシリーズ

免疫・炎症病態×治療Update

1版

大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学 教授 熊ノ郷 淳 編

定価

6,160(本体 5,600円 +税10%)


  • B5判  252頁
  • 2019年5月 発行
  • ISBN 978-4-525-16781-3

免疫・炎症研究の最前線から新たな診断・治療法への展開へ

免疫系の分子機構に基づいた,生物学的製剤,免疫チェックポイント療法,CAR-T療法など,新たな診断・治療法の開発が進んでいる.免疫・アレルギー疾患を中心に,免疫系がその発症にかかわる呼吸器・消化器・代謝性疾患などについても,病態の理解ならびに治療法の開発の流れから今後の展開までを第一線の研究者がわかりやすく解説.

  • 序文
  • 目次
序文
 今,医学・生命科学の主戦場はヒト疾患であるといっても過言ではありません.従来,基礎研究と臨床研究のあいだには厳然とした垣根がありましたが,現在は患者検体が,1細胞解析,トランスクリプトーム解析,ゲノム解析などの最新の手法で解析され,そのデータが患者さんの臨床情報と紐づけられながら,新しい診断・治療法の開発につながる時代となってきました.その端緒となったのは,21世紀になって登場した抗体医薬(生物学的製剤)に代表される免疫調節薬の登場です.免疫調節薬は現在,関節リウマチなど自己免疫疾患の治療や,がん免疫治療に広く使われ,低分子化合物である分子標的薬も含めて,今後もつぎつぎと新しい薬剤が登場すると予想されています.
 1980年代,特定の遺伝子を欠損させた「ノックアウトマウス」を用いた解析手法が普及し,生命の理解は飛躍的に進みました.その一方で,マウスで得られた知見をそのままヒトに適用し,ヒト疾患の診断・治療法の開発につなげるにあたっては,ヒトとマウスの違いが大きな壁となることもしばしばでした.ところが,免疫調節薬はまさに「ノックアウトマウス」ならぬ「ノックアウトヒューマン」を日常臨床で生み出し,日常臨床がそのままヒトの生命科学の探求の場となりえる時代が到来しています.したがって,免疫や炎症の最新の知識を疾患病態とともに理解することの重要性は,ヒト疾患,診療科の垣根を越え,今後ますます高まるといえます.
 本書は,免疫の異常・破綻や炎症反応の持続がもたらす疾患の病態を最新の免疫・炎症研究の知見をもとに理解し,最新の治療法・診断法をキャッチアップしながら,次の医療・医学の発展につなげることを目的に,各専門領域の第一人者に執筆いただきました.本書で紹介される知見・情報が基礎,臨床の垣根を越えて,研究者,臨床医,薬剤開発者,大学院生,学部学生,医療従事者など幅広い読者に有益であることを願っています.

2019年3月
大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学 教授
熊ノ郷 淳
目次
第Ⅰ部 免疫学の基礎知識

第1章 自然免疫  (加納規資・織 大祐・河合太郎)
 1-1 パターン認識受容体(PRR)による自然免疫応答
  1.Toll様受容体(TLR)
  2.RIG-I様受容体(RLR)
  3.細胞内DNAセンサー
  4.NOD様受容体(NLR)
 1-2 自然免疫と疾患
  1.Toll様受容体(TLR)関連疾患
  2.RIG-I様受容体(RLR)関連疾患
  3.細胞内DNAセンサー関連疾患
  4.NOD様受容体(NLR)関連疾患


第2章 獲得免疫  (田中稔之)
 2-1 獲得免疫の特性と誘導
 2-2 獲得免疫のプレイヤー:リンパ組織とリンパ球
 2-3 獲得免疫のエフェクター機構
  1.エフェクターT細胞のはたらき
  2.エフェクターB細胞と抗体
  3.獲得免疫と自然免疫との連携
  4.サイトカインとその受容体
 2-4 免疫病態と治療



第Ⅱ部 免疫系疾患の病態の理解と治療への展開

第3章 関節リウマチ(RA)  (松本 功)
 3-1 関節リウマチ(RA)の臨床:分類と治療の変遷
 3-2 関節リウマチ(RA)の病因論
  1.自己免疫応答の誘導機構
  2.抗シトルリン化蛋白抗体(ACPA)とリウマトイド因子(RF),抗カルバミル化蛋白抗体
 3-3 関節リウマチ(RA)の免疫病態:新規治療からみえてくるもの
 3-4 新たな関節リウマチ(RA)バイオマーカー:血清中のシトルリン化ITIH4蛋白
   Column ペプチドGPI誘導関節炎


第4章 全身性エリテマトーデス(SLE)とループス腎炎(LN)─免疫学的背景と治療の展開  
(渡辺 充・岡田正人)
 4-1 全身性エリテマトーデス(SLE)の概論
 4-2 全身性エリテマトーデス(SLE)の病態
 4-3 全身性エリテマトーデス(SLE)の治療
 4-4 ループス腎炎(LN)の組織分類:ISN/RPS分類
   Column ループス腎炎(LN)の病因学的分類への改訂:phase1
 4-5 ループス腎炎(LN)のサブタイプ分類
 4-6 新規治療薬


第5章 血管炎  (西出真之)
 5-1 高安動脈炎
  1.高安動脈炎の臨床的総論
  2.高安動脈炎の病態および治療研究
 5-2 ANCA関連血管炎
  1.ANCA関連血管炎の臨床的総論
  2.ANCA関連血管炎の病態および治療研究


第6章 アレルギー性気道疾患の病態と分子標的薬治療  (目黒和行・中島裕史)
 6-1 気管支喘息の病態生理
 6-2 重症喘息の分子標的薬治療
  1.IgE阻害療法
  2.IL-5阻害療法
  3.IL-4/IL-13阻害療法
  4.炎症性サイトカインを標的とした喘息治療
  5.気道上皮細胞由来サイトカインを標的とした喘息治療



第Ⅲ部 免疫・炎症性疾患の病態の理解と治療への展開

第7章 糖尿病  (岩部真人・山内敏正・岩部美紀・門脇 孝)
 7-1 インスリン抵抗性における炎症性サイトカインの関与
 7-2 アディポネクチンの同定とその機能解明
 7-3 アディポネクチンの肥満関連疾患における病態生理的意義
 7-4 アディポネクチン受容体(AdipoR)の同定とその機能解明
 7-5 アディポネクチン受容体(AdipoR)と健康長寿シグナル
 7-6 アディポネクチン受容体(AdipoR)アゴニストの開発
 7-7 アディポネクチン受容体(AdipoR)の立体構造の解明


第8章 肥満・代謝  (福原淳範・下村伊一郎)
 8-1 肥満病態と慢性炎症
 8-2 肥満とアディポサイトカイン
 8-3 肥満とマクロファージ
 8-4 マクロファージの活性化因子
 8-5 脂肪組織と制御性T細胞(Treg)
 8-6 脂肪組織における酸化ストレス
 8-7 炎症制御による肥満病態治療


第9章 間質性肺炎・過敏性肺炎  (佐藤正大・西岡安彦)
 9-1 特発性間質性肺炎(IIP)
  1.特発性間質性肺炎(IIP)の分類とその特徴
  2.特発性肺線維症(IPF)の病態
  3.認可されている特発性肺線維症(IPF)の治療薬
  4.特発性肺線維症(IPF)研究のこれから
 9-2 過敏性肺炎(HP)
  1.過敏性肺炎(HP)の病理
  2.過敏性肺炎(HP)の診断
  3.過敏性肺炎(HP)研究のこれから


第10章 21世紀の国民病:慢性閉塞性肺疾患(COPD)  (武田吉人・木庭太郎・熊ノ郷 淳)
 10-1 全身性疾患としての慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 10-2 多様化する慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病因
 10-3 動物モデルによる新規病態解明や治療法の開発
 10-4 個別化医療に向けて


第11章 炎症性腸疾患(IBD)の理解と治療への応用  (筋野智久・金井隆典)
 11-1 炎症性腸疾患(IBD)の感受性遺伝子
 11-2 環境因子と腸内細菌
 11-3 腸内細菌による代謝物の代謝経路に関する異常
 11-4 自然免疫と治療
 11-5 獲得免疫と治療
 11-6 神経学的因子
 11-7 細胞のホーミング,接着


第12章 肝臓:臓器の炎症を基盤とした線維化と発がん  (竹原徹郎)
 12-1 慢性肝疾患における肝細胞のアポトーシス
 12-2 オートファジーとアポトーシス
   Column アポトーシスとオートファジーの発見および研究の流れ
 12-3 オートファジーと脂肪代謝
 12-4 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療


第13章 造血幹細胞移植─HLAバリアへの挑戦  (豊嶋崇徳)
 13-1 造血幹細胞移植の概要
 13-2 HLA半合致移植(ハプロ移植)の開発の歴史
 13-3 ハプロ移植の現状
 13-4 PTCy-ハプロ移植の位置付け
 13-5 移植後大量シクロホスファミド(PTCy)法の新たな展開
 13-6 ハプロ移植がもたらす恩恵


第14章 血液疾患と生物学的製剤─発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に対するエクリズマブによる治療をとおして  (西村純一)
 14-1 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の病態
 14-2 自己炎症症状を伴うPNH:PIGT-PNH
 14-3 抗C5単クローン抗体:エクリズマブ
 14-4 髄膜炎菌感染症とその対策
 14-5 血管外溶血
 14-6 C5遺伝子多型によるエクリズマブ不応症
 14-7 新規治療薬の開発
 14-8 リサイクリング抗体®技術 123


第15章 結核・非結核性抗酸菌症  (西村直矢・山﨑 晶)
 15-1 結核の現在
 15-2 結核菌の細菌学的特徴
 15-3 結核・潜在性結核感染症の診断
 15-4 結核の予防
 15-5 結核の治療と薬剤耐性
 15-6 抗酸菌感染症における問題点
 15-7 結核菌を認識する免疫受容体
 15-8 治療への応用


第16章 アトピー性皮膚炎  (野村尚史・椛島健治)
 16-1 皮膚バリア
 16-2 アトピー性皮膚炎の発症における免疫と炎症の役割
 16-3 瘙痒(かゆみ)
 16-4 アトピー性皮膚炎の治療標的
 16-5 アトピー性皮膚炎の層別化


第17章 乾 癬  (藤本 学)
 17-1 乾癬の臨床
 17-2 乾癬の遺伝的素因
 17-3 乾癬の病態
 17-4 乾癬の病因論
 17-5 乾癬の治療


第18章 高安動脈炎の病態とIL-6阻害療法  (中岡良和)
 18-1 血管炎の分類と高安動脈炎の疫学
 18-2 高安動脈炎の病理と病因
 18-3 高安動脈炎の症状および診断
 18-4 高安動脈炎の従来の内科的治療
 18-5 高安動脈炎に対する生物学的製剤での治療
  1.TNF-α阻害薬
  2.抗IL-6受容体抗体:トシリズマブ(TCZ)


第19章 多発性硬化症(MS)・視神経脊髄炎(NMO)  (中辻裕司・奥野龍禎)
 19-1 多発性硬化症(MS)・NMOSDの病態,疫学
 19-2 多発性硬化症(MS)とSema4A
 19-3 活性酸素種(ROS)とミトコンドリア障害をターゲットにした多発性硬化症(MS)治療の試み
 19-4 視神経脊髄炎(NMO)の髄液におけるミトコンドリアDNAの増加


第20章 免疫チェックポイント阻害薬のすべて  (柘植彩花・西川博嘉)
 20-1 抗腫瘍免疫応答の概要
 20-2 免疫チェックポイント分子の機能
   Column 制御性T細胞(Treg)
   Column がん免疫編集
 20-3 免疫チェックポイント分子の同定:CTLA-4,PD-1,PD-1リガンド
 20-4 免疫チェックポイント阻害薬の開発
   Column 抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性
 20-5 その他の免疫チェックポイント分子
 20-6 バイオマーカー
 20-7 免疫関連有害事象


第21章 CART細胞療法  (保仙直毅)
 21-1 CART細胞療法の概要
 21-2 多発性骨髄腫に対する新規CART細胞療法の開発
 21-3 より有効かつ安全なCART細胞療法の開発へ向けて
  1.T細胞の腫瘍局所への遊走,浸潤の制御
  2.T細胞疲弊の回避あるいは疲弊状態からの回復
  3.T細胞代謝の制御



第Ⅳ部 免疫・炎症系の最新トピックス

第22章 腸管免疫学研究のフロントライン  (松本龍太郎・高橋大輔・長谷耕二)
 22-1 腸上皮細胞の種類とその機能
 22-2 腸内細菌によるIgA産生制御
 22-3 腸管におけるT細胞応答
  1.腸管におけるT細胞とその機能
  2.腸内細菌と制御性T細胞(Treg)誘導
  3.制御性T細胞(Treg)による大腸炎の抑制
 22-4 腸内細菌と全身免疫


第23章 交感神経による免疫細胞動態の制御  (鈴木一博)
 23-1 交感神経系と免疫系の接点
 23-2 交感神経によるリンパ球の動態制御
  1.交感神経からの入力とリンパ球動態のメカニズム
  2.リンパ球動態の日内変動
 23-3 交感神経による好中球の動態制御
 23-4 交感神経によって免疫細胞動態が制御される意義


第24章 骨免疫学  (浅野達雄・高柳 広)
 24-1 骨を構成する細胞の概要
 24-2 骨と免疫系を結ぶ多機能性サイトカイン:RANKL
 24-3 関節リウマチにおける炎症性骨破壊
 24-4 骨髄微小環境と骨構成細胞


第25章 免疫代謝  (中西由光・姜 秀辰・熊ノ郷 淳)
 25-1 解糖系
 25-2 クエン酸回路および電子伝達系における酸化的リン酸化
 25-3 アミノ酸代謝
 25-4 脂肪酸代謝
 25-5 神経ガイダンス因子による免疫代謝制御


第26章 自己抗体と自己抗原-MHCクラスⅡ複合体  (日和良介・荒瀬 尚)
 26-1 膠原病における自己抗体
 26-2 自己抗体の産生機序
 26-3 ミスフォールドタンパク質のMHCクラスⅡによる輸送
 26-4 HLAクラスⅡ遺伝子と自己免疫疾患
 26-5 自己抗原-HLAクラスⅡ複合体と自己抗体


第275章 ワクチンのトピックス  (柴原理志・石井 健)
 27-1 ワクチン技術
  1.治療ワクチン
  2.次世代シークエンサーとがん抗原
  3.粘膜ワクチンとワクチンデリバリーシステム
 27-2 ワクチン開発のトピックス
  1.帯状疱疹ワクチンと新しいアジュバント
  2.万能インフルエンザワクチン
  3.高血圧症
  4.ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン


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