書籍カテゴリー:臨床看護学|医学教育学

医療現場の外国人対応 英語だけじゃない「やさしい日本語」
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医療現場の外国人対応 英語だけじゃない「やさしい日本語」

1版

  • 順天堂大学大学院医学教育科 医学教育学 教授 武田裕子 著
  • 聖心女子大学現代教養学部 日本語日本文学科 教授 岩田一成 著
  • NPO法人 国際活動市民中心(CINGA)コーディネーター 新居みどり 著

定価:1,980円(本体1,800円+税10%)

  • A5判 119頁
  • 2021年5月 発行
  • ISBN978-4-525-02251-8

概要

まずは「日本語はだいじょうぶですか?」と聞いてみよう!

多くの医師や看護師は外国人診療が苦手という.その理由は「英語が苦手だから」.しかし,外国人でもわかるように,わかりやすく話す(書く)日本語─「やさしい日本語」を用いることで,外国人診療を円滑にすることができる.
また,「やさしい日本語」は高齢者,病気や治療の影響で理解度が低下している入院患者,小さな子どもや障がいを抱えている方など,さまざまな患者に接する際にも役に立つ.
本書は医療の現場で必要とされる「やさしい日本語」を使うコツを事例から学べる一冊.

序文

在住外国人の方々に困りごと調査をすると,医療に関することが必ず上位にきます.ことばの壁が不安につながり,よほど症状が重くなければ受診せず,自国から持参した薬でまずは様子を見るという方も少なくありません.一方,医療者の側には,外国人との会話は英語という思い込みがあり,言葉が通じない不安や文化の違いへの戸惑いから,外国人診療はなるべく避けたいという気持ちになりがちです.本書は,「やさしい日本語」を用いて「ことばの壁」を低くすることで,お互いの「こころの壁」も低くなってほしいという願いを込めて作成しました.
私たちは普段から,子どもに何かを伝えたり,耳の遠い高齢者に説明するときに,文章の長さや単語の選択に工夫をします.そのように相手に合わせて,わかりやすく伝える日本語が「やさしい日本語」です.本書では,外国人に伝わりやすくするためのコツや工夫を,日本語教育の専門家が「基礎編」,「実践編」として解説しています.また,相手のことをよく理解するほど,伝わりやすい言葉を選ぶことができます.そこで,「現場の声を聴く」という章では,外国人支援に携わる共生コーディネーターが,外国人の方々の思いや抱えている困難をご紹介し,そしてその相談先をお伝えします.「資料」には,外国人の方が医療機関にみえたときに活用できる指さしボードや,日本に多くお住いの外国人の出身国の医療制度を掲載しました.
専門性の高い医療の現場では,医療通訳者の同席が必要な場面が必ずあります.そのような時も,「やさしい日本語」は伝わりやすく的確な通訳につながります.どんどん開発が進んでいる翻訳アプリも,「やさしい日本語」で話すと正確に翻訳してくれます.最近よく目にするようになった手話通訳者にとっても,「やさしい日本語」はありがたいと言われます.
著者である私たちは,この「やさしい日本語」をぜひ医療者の皆さまに知っていただきたいと,“医療×「やさしい日本語」研究会”を設立して研修会を開催したり,研究会のホームページでは無料の動画教材をはじめ,診療に役立つ情報提供をしています.本書の内容は,そうした活動のなかでいただいたコメントを反映したものになっています.きっと,参考にしていただけると思います.

本書の執筆にあたり,ふじみ野国際交流センターの安銀柱さん,NPO法人「街のひろば」の梶加寿子さんから外国人の置かれた状況についてお話を伺いました.「海外の医療事情」は,これまで順天堂大学医学部・大学院医学研究科に留学した医師・医学生の皆様よりお寄せいただいた情報を基に作成しました.“医療×「やさしい日本語」研究会”アシスタントの原尚子さんには,たくさんの資料を整理・翻訳していただきました.最後に,企画から出版まで粘り強く伴走してくださった南山堂の高見沢恵さんのおかげで本書は刊行に至りました.心より感謝申し上げます.

本書執筆中にもコロナ禍はどんどん進行し,今も終息の兆しは見えません.オンラインミーティングで本の相談を重ねながら,新型コロナウイルスによって社会の抱える困難が浮き彫りになったことが何度も話題に上りました.社会的距離が孤立を深め,経済的困窮が健康に影響を与えています.情報が十分得られなければ不安を生みます.大震災の時と状況は似ているとも言えます.パンデミックは,あらゆる人の健康が守られ生活が支えられて初めて収束に向かいます.そのためには「ことばの壁」も「こころの壁」も低くする必要があります.「やさしい日本語」の出番です.

2021年4月
武田裕子,岩田一成,新居みどり

目次

はじめに  
1.どちらが「やさしい」? 腹痛による外来受診
2.どちらが「やさしい」? 胸痛による救急外来受診
3.医師の対応は同じでも…腰痛による定期外来受診

基礎編  
1.外国人医療をめぐる環境
・医療現場の課題
・外国人が困っていること
2.「やさしい日本語」とは?
・「やさしい日本語」
・背景と効果
・これからが正念場
3.在住外国人の国籍─ほとんどがアジア出身
・外国人の多数派はアジア人
・在住外国人の実像
4.在住外国人の言語─日本語話者は多い
・国際語の打率
・できる言語は日本語です
・読める文字はひらがなです
5.英語を過信しないこと
・英語への過信
・日本語を話したがっている人はいます
・英単語交じり日本語に要注意

実践編  
Ⅰ.基本ルール
1.フローチャート解説
A 最初の一言は「日本語はだいじょうぶですか?」
B 必要に応じて多言語サービスへ
C 「やさしい日本語」による診療
D 「やさしい日本語」の限界を見極める
2.話し出す前に内容を整理
・全体像を最初に提示
・結論から話すこと
3.一文を短くして相手の反応を見る
・短く話しましょう
・相手の目を見ましょう
・説明の基本パターン
4.話しかけてきた人に返事をすること
・第三者返答
・公平な耳
5.質問と傾聴
・種類の違う質問で言い換える
・話の聞き方
6.外国人=「やさしい日本語」とは限らない
・相手の日本語能力をよくみること
・相手の気持ちを想像しましょう
・「やさしい日本語」は子ども扱いではない
練習─外国人の日本語を聞きましょう

Ⅱ.言い換え技術
1.文を言い換える技術
・言葉の言い換えを考える
2.言葉を伝える技術
・言い換え・実物・写真・翻訳
・さまざまなツールの活用
3.尊敬・謙譲語をやめましょう
・よかれと思ってやっているんですが…
・尊敬語・謙譲語の作り方
・丁寧語を付ければだいじょうぶ
・依頼は「〜てください」
練習─尊敬語・謙譲語
4.漢語にはご注意
・日本人でさえわかっていない医療漢語用語
・漢語使用のコツ
・外国人にとっても難しい漢語
・難解さのレベルを理解する
練習─漢語の言い換え
練習─漢語のレベル判定
5.外来語にもご注意
・日本人にも難しい外来語
・外国人にはもっと難しい
・英語話者には伝わるのか?
練習─外来語の言い換え
練習─外来語のレベル判定
6.オノマトペ(擬音語・擬態語)は伝わらない
・日本人には簡単でも外国人には非常に難解
・日本語母語話者には簡単です
・医療現場で使われるオノマトペ
練習─オノマトペの意味
7.美化語(お/ご〜)はほどほどに
・美化語に注意
・アクセントが変わる
・美化語は外せない言葉もある 
練習─ 美化語

外国人・外国人支援 現場の声を聴く  
外国人の声
・伝えようとする姿勢がうれしいです
・外国人患者さんが受診するのは症状が進んでから
・「だいじょうぶ」ばかりでは不安になります
・痛みに耐える文化,抑える文化
・「はい」の意味
外国人相談の現場からの声とサポートのポイント
・「ことばの壁」① 話せるけれど,専門用語は難しい
・「ことばの壁」② 話せるけれど,読むのは難しい
・「ことばの壁」③ 話せるけれど,書くのは難しい
・「制度の壁」① 在留資格とは何か?
・「制度の壁」② 生活・福祉サービスが在留資格によって異なる?!
・「制度の壁」③ 日本人は外国人が在留資格をもって暮らしていることを知らない
・「こころの壁」① ちょっとしたことをきける人がいない
・「こころの壁」② 人ではなく,ことばの能力によって判断される
・「こころの壁」③ 外国に暮らすことだけで潜在的なストレス
・医療現場の方が相談できる相談センター

資 料
1.動画教材
・新型コロナウイルス検査の場面で使えるフレーズ
・検査時のこんなフレーズを「やさしい日本語」で表現
・医療における「やさしい日本語」実践動画
2.言語選択コミュニケーションボード
3.症状選択コミュニケーションボード
4.病名伝達コミュニケーションボード
5.海外の医療事情

column
・「やさしい日本語」はスキル(技術)とマインドセット(心持ち)
・ローマ字の呪縛
・「やさしい日本語」研究(フォリナー・トーク)
・外国人の日本語能力を判定する指標
・翻訳ツール
・丁寧さとわかりやすさ
・英語圏の取り組み plain English
・新型コロナウイルス感染症

●参考文献
●索引